黄昏の地上波TVのなかでビールのCMだけが元気をたもっている。
ビールCMの出演者のなかで、サントリーの「檀れい」ほど女性層に受けなかったタレントはいない。
2007年以来60本以上の作品をとったが、ことごとく不評だった。彼女が考えて演じれば演じるほどユーザーを失っていった。すべてが男受けを狙った計算ずくと受け止められ、夫の及川光博までがドツボに嵌まったオバカな俳優と評判を落とす結果を招いてしまった。
その仕草や台詞のひとつひとつが、積極的なあざとさと受け止められて、檀れいは金麦とともに沈没した。彼女はいま松竹エンターテイメントを止め、太田プロにかわったが、有吉や指原のいるお笑いプロになじめるか、どうか、はなはだ疑問だ。
彼女の表現の誇張は宝塚という土壌に大きな責任がある。一方的な自己顕示のみで転がしていく宝塚の演技はとても一般人の鑑賞にたえられるものではない。少女歌劇という背景があってこそのものだ。天海祐希、黒木瞳、大地真央、檀れい、紫吹淳など、みんなお多分にもれずリアルな芝居はできない。
サントリーは檀れいに懲りて、石原さとみへスイッチしたが、中年のわざとらしさから若い自然体へというコンセプトが先行し、やたら花吹雪を散らす効果さんの大変さと石原のオーバーなアドリブだけが目立っている。
今いちばん光っているのはキリン新一番搾りの「満島ひかり」かもしれない。
餃子、おでん、寿司、焼き鳥と、ビールが美味しい瞬間にだけ映像をしぼっている。男たちのたまり場屋台での飲み比べや、仕事帰りのひとり焼肉と、今のはたらく女性のリアルに焦点をあわせている。スタッフが明確なコンセプトをもっているというが大きい。
満島の演技も自然とデフォルメのギリギリの線なのだが、彼女の個性に守られてなんとかリアルさをたもっている。この先飽きられないためには、なんらかのプラス・ワンが必要だろう。
目隠しをして飲み比べなどという馬鹿馬鹿しさではなく、コクやキレにも頼らない、未知のCMコンセプトを見付けることが、ビールCMの明日を保証する。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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