「放題族」のモラルについて

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 いま旅行会社の旬の企画は、「○○放題」だそうである。
 いかにして欲望放題のユーザーを満足させるか、そのことに全神経を集中させて旅行会社の企画マンは全国を走りまくっている。
 とくに女性相手のツアー企画には、「食べ放題」「詰め放題」といった実利がつかないと成功しないという。それも日帰り一日ツアーでなければならない。名所旧跡といったかっての看板では誰も振り返らない。名所、旧跡は放題から放題へいくブリッジのようなもので、ツアーの主題にはならない、と嘆いている。
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 と、ここまで書いても一日バスツアーに慣れていない人には、良く理解できないかもしれない。
 JTBも、クラブ・ツーリズムも、HISもみな海外旅行客を確保するには、如何に国内日常企画をヒットさせるかにかかっている。国内企画への信頼が海外旅行の信頼につながるのだ。
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 苺食べ放題にしても十年一日のごとく、はえつくばってもいで食べるのでは客は離れる、食べやすいように栽培棚の高さを工夫する、新しい品種、話題の品種をたえず入れる。グループ・イーティングの環境を整える。等々…。
 蟹食べ放題にしても、地域ごとにことなる蟹の呼び名を全面にだして提供する、同じ蟹でも名前が違うとその分贅沢したような気分になるし、「今日はタラバとズワイを食べてきたわ」と満足を引き出す工夫が必要になる。
 そしてツアーの仕上げは詰め放題、野菜系かお魚系かそれともお菓子系かと旅行会社は苦労する。
詰め放題.jpg
 かくして日本人は食べ放題から「食欲放題」となり、詰め放題から「物欲放題」となり、さらに金銭欲が「裏金放題」と発展し、テレビでは「突撃!カネオくん」などという破廉恥な番組までできている。
 こうした「放題族」こそ、現代社会に巣喰うコマッタ族であり、「放題」への反省を促すのは、政治家の務めではないだろうか。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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