東京駅を通ると丸の内南口の本屋さんに立ち寄ることが多い。約束の時間調節に本屋ほど、適切な環境はない。本屋さん側の迷惑を考えると、30分は過剰だが、10分、15分は許される。お茶をしながら本の読めるコーナーまで用意されているのだから……。
最近その本屋さんの店頭で見つけた佐光紀子さんの「「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす」というタイトルに眼がとまった。
日本の女性は家事をしすぎる、そのうえ家事をきちんとしすぎる、それがいけない、それが日本を滅ぼすというのだ。表紙を見たときには、洒落か逆説的な言い回しかと思ったが、すこし読み進むと正気であるということがわかった。丁寧な暮らしや、家事をきちんとこなすこと、いきとどいた子育てをすることを、伝統的に女性労働としてきたこの国の歴史が悪い。日本の常識は世界の非常識と断じた新書であった。
アメリカでは、アメリカでは、が連発されるが、なかにはスウェーデンではというのもあった。スウェーデンでは「専業主婦というのはすでに絶滅危惧種です。少数存在する専業主婦の人たちも表にでようとはしません。」専業主婦はむしろ恥である、といった論調。
コンビニ弁当とお母さんの手作り弁当だったら、圧倒的にお母さんの手作り弁当がいいと考える人が多い、それこそが日本の後進性と論じている。政府が推進した「早寝早起き朝ごはん」国民運動などもとんでもない。ウェブサイトには、コーンフレークに牛乳をかけたり、トースト一枚にコーヒーという写真は一枚もない。骨太納豆和え、アスパラの味噌汁、煮干しで出汁といったレシピが提案されている。朝ご飯をちゃんと食べている子供は成績がいいといったデータまで提示している、と非難している。
この国では母の家事スキルは科学的な部分もあるが、感情的に合理化されている。もういい加減に眼をさましたら、という本であった。
クリスマスからお正月、成人式にバレンタイン、お雛様、菖蒲の節句、鯉のぼりにハロウィン、あまりに行事が多すぎる。いっそ全部止めたらと筆者はいうのだが、果たして皆さんはどう考えるか、部分的には賛成もあったが、殺伐として文化も伝統もない毎日がやってくるような気がする読後感だった。
「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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