いま一番に嫌いなテレビCMは、矢沢永吉の日産のくるまのコマーシャルだ。
「新しいことやると必ず言われるんだよね。無茶だとか不可能だとか。俺は大好きだね、この言葉」新しい技術の開発にちからをつくすのは、メーカーとして当たり前のことだが、矢沢が「やっちゃえNISSAN!」となんのためらいもなく言い切ると、ついこの間におこした三菱の排気偽装事件をおもいだす。三菱の事件はじつは日産の事件だったという実態があまり知られていないので、日産は助かっているが、生産の実質管理は日産の派遣スタッフによっておこなわれていたのだ。
かって日産は「技術の日産」といわれて、「販売のトヨタ」を見下していた過去がある。
それに対し、こつこつとマーケティングを積み重ね、対応車種を開発してついに世界一に登りつめたのが、現在のトヨタなのだ。
日産の技術はいつのまにか錆びついてユーザーの心をつなぎとめることができなかった。そこへ乗り込んできたのが、カルロス・ゴーンという徹底的にケチな経営者だった。何千何百という下請け工場を泣かせて、ニッサンはようやく立ち直った。「やっちゃえNISSAN!」と軽口をたたく前に、「アリガトウ、ニホンの下請け」なのだ。
このように企業の歴史をふまえないで、一方的に居丈高なCMを発信するヤンキーまがいの気質は、広告代理店や勘違いな若手企業家に多いが、この国の醇風美俗にはあわない。中途半端なグルーバル思想のいちばん悪いところだろう。
いま車は自動化と知能化のまえにたたされ、化石燃料をつかった内燃機関はやがて市場から退場しなければならない。ハードウェアはすでに完成され、あとはソフトウェアの優劣にかかっているといわれる。莫大な報酬をとり一部の取り巻きと算盤に頼った企業に、優秀なソフト開発者も国民の心もなじまない。
「やっちゃえNISSAN!」ではなく「くたばれNISSAN!}にならないことを祈っている。
「やっちゃえNISSAN」か、「くたばれNISSAN」か。
コメント
1件のフィードバック
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このCMめっちゃ納得いきません
運転手は運転に集中させるべきなのに!と
ただでさえ踏み間違えとかで事故を起こしているのに!
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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