散歩というライフスタイルは日本人に向いている。
幾何学的に整備された西洋庭園を散歩してもあまり面白くない。自由に植栽された日本庭園のほうが散歩の楽しみがある。見事にビルが並んでいる街並みは散歩には向いていない。雑然といろいろな家並みがあって
散歩が成り立つ。
テレビ局が貧乏になって、いくつかの散歩番組が登場してきた。スタジオも大道具もいらない。タレントを歩かせればそれで番組が成立するのだから、こんなに有難い番組はない。あとは見るに値する散歩ができるかどうか、その一点にかかっている。
早逝した地井武男さんは、サンポニストとして抜群の個性だった。腕を斜めに振りながら足早に歩きながら、町の表情を的確に見、人情のきびをとらえた。寺社があれば、まず拝んでから次の散歩に移った。町に暮らすひとと同じ目線で率直に対話した。得難い庶民性と人間力が地井さんには備わっていた。
加山雄三は全くダメだった。かってスターと呼ばれた人が、いかに貧しい目線しかもっていなかったか、まざまざと知らしめた。町を歩いても自意識だけでその町に興味をもたない。たまたま言葉を交わしても、上から目線で謙虚さがない。かってのスターへの憧れ満載のオバチャン族だけに受けた街歩きだった。
散歩という粋なゆとりのあるライフスタイルとは似ても似つかないものだった。
最近面白いと感じたのは、「さんぽサンデー」。男女二組のタレントが異なる駅からスタートし真ん中の駅で落ち合うのだが、それぞれの世代感覚やら人間力が見て取れ、この役者は本物だとか、うわべだけのニセモノかが良く判る。配役の妙で、お馬鹿なタレントはちゃんとバカに見えるし、人生豊かにすごしてきた女優はそれなりに映る。「さんぽサンデー」は「ブラタモリ」とともに最近の収穫である。
「ぶらタモリ」と「さんぽサンデー」
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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